07)スラムドッグ$ミリオネア
『スラムドッグ$ミリオネア』 (2008年 英)
この年の米国/英国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞などの主要映画賞を総なめにした話題作。
先日TVの地上波でやっていたので、話題作というだけでほとんど予備知識がないまま鑑賞した。
正直観るまでは、スラム出身の若者がTV局をいかに出し抜いて大金を手にするのか?をスリリングに描くエンターテイメント色の強い作品だと思っていたが… すいません、完全に認識違いでありました。
それまでほぼ無名と言っていい現地インド系俳優を起用し、英国人のダニー・ボイルがメガホンを取る。
実はダニー・ボイル監督の映画は初めて観たのだが、インドの街並みや情景、人物が綺麗に描かれていて、ある種アカ抜けた映像表現が美しい。その他のボイル作品も是非観てみたいと感じた。
物語の舞台はインドのムンバイ。極貧のスラム出身の青年ジャマールは、人気クイズ番組「ミリオネア」に出演する。
まともな教育など受けたことのないはずの彼が、正解を当て続け、あれよあれよという間に、あと1問で2000万ルピーの賞金を手に入れられる、という段階まで登りつめる。
ジャマールは無学なのにも関わらず難問に正解し続けることに嫌疑をかけられ、警察で取り調べを受けるハメになる。そこで自らの生い立ちを語り始めるのだが…。
まず映画の冒頭で観客に対してミリオネア形式の四択クイズが出題される。
「彼はあと1問でミリオネア。なぜ勝ち進めた?」
その答えのヒントが、実は彼の過酷な半生の所々に隠されており、その生い立ちを追体験することによって、鑑賞者にも彼の真実の姿、思いが伝わってくるような演出が施されている。実にうまいストーリー構成だ。
さらに、ラストに向けていかにも映画っぽい盛り上がりとともに、観る者にホンワカとした余韻を残す心憎い仕上がりとなっている。このあたりがアカデミー会員の心を掴んだ要因であろう。
この映画のラスト、なんとなく私の好きな『ニュー・シネマ・パラダイス』のラストシーンに相通ずるものがある気がする。あるいは『ロッキー』っぽいとも言えるかもしれない。いずれにせよ映画特有のカタルシスに浸れるのは間違いない。
結局のところ、彼は大金目当てにミリオネアに出演したのではなく、愛するの女性を探し出すために人気番組を利用したという訳か…。そう、まさしくこの映画はスリリングなチート映画などの類ではない。完全な純愛映画であった。
映画の最後、冒頭のクイズの答えが提示される。
その答えとは・・・
「It is written (運命だった)」
私的評価:★★★★★