54)ワイルドカード
ワイルドカード (2015年 米)
ここ最近ジェイソン・ステイサムの過去のアクション映画を何本かまとめて観たのだが、その中で特に印象に残った『ワイルドカード』が本日のお題。
監督は、『コン・エアー』やステイサムも出演していた『メカニック』『エクスペンダブルズ2』を撮ったサイモン・ウェスト。アクション映画演出はお手のモノの御人だ。尚、この監督のフィルモグラフィーは決して嫌いではない。
舞台はラスベガス。セキュリティサービスという名の”用心棒”を生業とした元特殊部隊員のニック・ワイルド(ジェイソン・ステイサム)の活躍と苦脳を描く。
何者かに暴行を受け重傷を負った元恋人に、犯人に復讐してほしいと懇願されるニック。ラスベガスにようやく自分の居場所を見つけ、あまりトラブルに巻き込まれたくないニックは、最初こそ断るものの、生来の正義感から復讐の手助けを引き受けてしまう。その復讐相手がマフィアの二代目だったことから話がややこしいことになっていく… というのが大まかなあらすじ。
ストーリーとしてはよくありがちな展開だが、これがなかなか面白かった。ただのアクション映画とは一線を画す男の悲哀が描かれていて奥深い。
格闘技無双のステイサムは本作おいても健在だが、『トランスポーター』シリーズなどとはちょっと毛色が 違う雰囲気。
まず何よりアクションが意外と少ない。全編で明確なバトルシークエンスと言えるのは実は3シーンほどしかない。
純粋にジェイソン・ステイサムのアクションを見てスッキリしたいという層は、地味で面白くないという評価を与えそうだ。だが、この数少ないアクションシーンがそれぞれ濃厚かつスタイリッシュに仕上がっている。
手法としては、今時としては陳腐になりかねないスローモーションを多用した格闘アクションだが、撮り方を工夫していて見応えがある。思わずアクションシーンだけリピートしてしまったほどだ。特に最後のマフィアをバターナイフとフォークだけでまとめてぶっ倒すシーンは必見。
さらに、過去を引きずりながらラスベガスという狭い土地でくすぶり続ける男の悲哀をジェイソン・ステイサムが丁寧に演じていて好印象を持った。
ラスベガスに嫌気が差し、離れたいと思いつつもギャンブルから逃れられない、強い肉体とは裏腹の弱い心の機微をうまく表現している。
これまでステイサムがこんな繊細な演技ができる俳優というイメージがなかったので、いい意味での驚きであった。
ステイサムアクション万歳!という映画では決してないが、ラストに向けてのカタルシスも用意されており良質なハードボイルド作品となっている。
私的評価:★★★★☆