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映画鑑賞備忘録

突然ですが、最近は映画館に行ける余裕もあまりなく... 主にTVで観た旧作映画の感想など思うがままに書き綴っています...。

18)戦場のピアニスト

戦場のピアニスト (2002年 仏・独・波・英合作)

 
ようやく観る機会を得た。
 
当備忘録の最初の方でたまたま立て続けに鑑賞した『プレデターズ』『ヴィレッジ』に出演していたエイドリアン・ブロディが、米オスカーの主演男優賞を受賞し、カンヌではパルムドール、英国ではアカデミー作品賞など各国の映画賞を総なめにした作品。
エイドリアン・ブロディは、実在のユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンを演じている。
 
舞台は第二次世界大戦が勃発しナチスドイツの侵攻にさらされたポーランドの都市、ワルシャワ
ワルシャワ在住のユダヤ人が次々とナチスドイツのホロコーストの犠牲となっていく様をシュピルマンの視点で捉え続けた戦争映画である。
全体的な印象としては、この手の映画特有のドンパチ表現や映画的なドラマチックな展開はかなり控えめで、実に淡々とした映像に仕上がっている。
淡々としているが故のリアリティがあり、直接訴えかけてくるような怖さがある。
 
監督のロマン・ポランスキーは、実際にユダヤ系のポーランド人であり、第二次大戦期にユダヤ人ゲットーに押し込められ、ドイツ軍に苦しめれた経験を持っているそうで、序盤から、これでもかと言わんばかりのドイツ軍の蛮行描写を見せつけられる。
特別な理由などなく、ただユダヤ人だからというだけで躊躇なく引き金をひくドイツ兵...。
車椅子ごと高層アパートのベランダから放り落とされるユダヤ老人...。
街中のそこかしこに転がる死体をまたいで往来するゲットーの日常...。
そこには、平和ボケの現代に生きる私たちにとって、まさに想像を絶する極限の光景が広がっていた。
 
友人たちの機転や仲間たちの協力により、強制収容所送りは免れ、さらには隠れ家を転々としながら命を繋いでいくシュピルマン
ワルシャワ・ゲットーを脱出した中盤以降は、逃げる、隠れる、また逃げる、のさながら"サバイバル映画"の様相となっている。
シュピルマンが生き残れた奇跡は、こういった周りの人たちの好意の積み重ねがあったことも忘れてはならないだろう。
 
そして、戦争も終盤に差しかかかった1944年、ドイツに対する反抗勢力らによるワルシャワ蜂起が勃発するも結果的には失敗に終わり、ドイツ軍は報復としてワルシャワ市街の徹底的な破壊工作に打って出る。
ドイツ軍の病院に一時的に隠れていたシュピルマンが命からがら市街地へと逃げ出して行くシーン。足下がフラフラのシュピルマンをカメラが遠目から引きの画でとらえていき、廃墟となってしまったワルシャワ市街の全容が現れる場面に絶句・・・。
廃墟と呼ぶのが生易しいくらいに破壊し尽くされた街並み。次の瞬間、これどうやって撮影したんだろう?という疑問が頭をよぎる。オープンセットなのか?それともCG合成なのか?いずれにせよ、この映画を象徴する場面のひとつになっている。(下記リンク先のDVDパッケージご参照)
 
この作品の原題「The Pianist」のタイトルから想像するにピアノ演奏の場面が結構あるのかと思いきや、意外にもピアノシーンは少ない… 否、逆に少ないからこそかえってピアノ演奏のシーンがより鮮烈に引き立つ効果があると感じる演出。
その象徴ともいえるのが、物語のラスト、隠遁していた廃屋でドイツ軍将校に見つかり、命じられるがままに演奏した場面である。
最初こそ恐怖や逃亡生活の疲れからか、たどたどしい旋律で始まるものの、徐々に抑圧されていた気持ちが開放していき、終盤にかけてショパンを見事に演奏してみせ、静かに見守っていたドイツ将校を唸らせる。
シュピルマンはピアニストだからこそ命を繋ぐことができた。ピアノが生きる希望、また生かされる意味だったのだ。
 
エイドリアン・ブロディは、配役毎に全然印象が異なる演じ分けっぷりに、以前「いい役者」と言及したが、この彼の代表作でも、どんどんやつれ、耐え忍ぶ悲劇の主人公にぴったりハマったイメージであり全く違和感はない。
実際のシュピルマンさんとはあまり似ていないとの意見もあるようだが、彼の熱演なくしてこの映画の成功はなかったと思われる。
 
シュピルマンさんは21世紀が始まる直前までご存命だったので、映画のストーリー的にはもちろんハッピーエンドなんだろうけど、重い、とてつもなく重く、そして考えさせられる映画だった。
 
私的評価:★★★★★ 

 

戦場のピアニスト [DVD]

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