40)オール・ユー・ニード・イズ・キル
オール・ユー・ニード・イズ・キル (2014年 米)
日本人作者のライトノベルを原作としたSF・アクション映画。
トム・クルーズ主演。監督は、『ボーン・アイデンティティ』シリーズをヒットさせた実績を持つダグ・リーマン。
地球侵略にきたエイリアンとの戦闘において、なぜか死んでも死んでも甦って出撃前にリセットされるという、いわゆる「タイムループ」がテーマとなっている。
そんな出来の悪いロールプレイングゲームのような設定でも、過去のトム映画同様のドキドキワクワクを与えてくれるのか..?若干の疑念を抱きつつの鑑賞となった。
ところが、そんな疑念も杞憂に終わり、稀代のアクション・スター+緻密に練られた脚本のおかげで、トムのフィルモグラフィーの中でも指折りの作品に仕上がっていると断言できる。
タイムループ物にありがちな分かりにくさや冗長さといったものはほとんどなく、繰り返しの場面も適度に省略したりといった小気味よいテンポで、最後まで飽きることなく楽しめる。
いかにも日本風な趣向の原作と本作とでは内容的にかい離しているとの評価も散見されるが、これ単体で見ると、どこをどう切り取ってもTHE・ハリウッド映画。
原作の大まかなプロットを継承しつつ、万人受けするツボを心得た演出により、うまく娯楽大作として昇華させることに成功している。
冒頭での主人公は軟弱で臆病者であり、いつもとはどこか違うトム・クルーズ氏で物語は始まっていくが、文字通りの死線を繰り返すうちに段々と戦う男の表情になっていく様が見どころの一つ。
生死のループを繰り返す中で、行動面あるいは感情面に変化をつけなければならない、という難しい役どころを見事に演じている。
そして違和感なくヒーローへと昇りつめるトムの相棒となる女性兵士、リタ・ヴラタスキを演じるエミリー・ブラントも素晴らしい。
こちらもいつもとはかなりイメージが違う、マッチョでストイックなヒロインを熱演している。何年か前にあの「ヴィクトリア女王」を演じていた人と同一人物とはとても思えない。とにかくカッコいい。
この作品のタイトルを意訳すると『殺しこそすべて』。言わずと知れたビートルズの名曲タイトルをもじったものと思われる。
元ネタになったビートルズ楽曲は、フランス国歌のイントロでつとに有名なわけだが、この作品でラスボスとの対決の舞台となるのが、パリ・ルーブル美術館にあるガラスのピラミッドの下という"小ネタ"に感心。
と、ここまで書いてきて、本国では原作とは違う『Edge of Tomorrow』というタイトルで公開されたことを知る。こうなると、このロケーションが計算されたものかどうかは知る由もない。
結末としては、ハリウッド的ご都合主義が垣間見え、初見では思わず「ええっ!?」であったが、トム・クルーズが故に不思議と嫌味には感じられず、これはこれでアリかな..という感想に落ち着いた。
私的評価:★★★★☆