22)はやぶさ映画2本
はやぶさ/HAYABUSA (2011年 日本:20世紀FOX)
おかえり、はやぶさ (2012年 日本:松竹)
はやぶさ映画は、2011年から2012年にかけて各配給会社より相次いで3本制作されたと記憶している。
今回鑑賞したのは、このうち最初に公開された『はやぶさ/HAYABUSA(以下、FOX版)』と最後発の『おかえり、はやぶさ(以下、松竹版)』である。
2作品とも同じテーマを下敷きにしているので、はやぶさの2003年の打ち上げから小惑星イトカワへのタッチダウン、そこから地球に微粒子サンプルを持ち帰ってくる紆余曲折まで、大まかなストーリーの流れはどちらも似通っている。というか全く同じと言っていい。
さらに、どちらの映画も宇宙航空研究開発機構(JAXA)の職員である若き架空のキャラクター(FOX版は竹内結子、松竹版は藤原竜也と杏)の目を通じて、プロジェクトの一連のエピソードを描いているところまでもほぼ一緒と言って差し支えないだろう。もちろんそれぞれのキャラクターの立ち位置、背景などに若干の差異はあるが。
他方、はやぶさミッションに対するアプローチの手法においてそれぞれの考え方に大きな違いがあるようだ。
FOX版の方は、打ち上げ前の計画の段階から、打ち上げ ~ 運用に至るまでのエピソードを淡々と時系列に追いかけていき、よりリアルさを追求している。それはまるでプロジェクトX的なドキュメンタリーを見ているようでもある。
ただ事実を淡々と紹介しているだけだと映画としての面白味がなくなるのを嫌ってか、探査機はやぶさをキャラ化(擬人化)し、はやぶさ自身の目線で観客に訴えることにより、ストーリーに程よい起伏を与えていると感じた。
また、竹内結子演じる新米研究員のほか、対外調整/広報担当教授役の西田敏行、はやぶさのプロジェクト責任者である川口淳一郎博士役を演じた佐野史郎など、非常にバランスがいい配役で、見ていて違和感なく映画に没頭できた点も評価していいと思う。
一方でリアルさを求めたゆえの代償と言えるかもしれないが、プロジェクトの進行以外の人間ドラマの部分については"やや弱い"と思って観た方がいい。
竹内結子が宇宙を目指すきっかけを与えた「亡き兄への想い」以外は特に感情に訴える描写もなく、そういうものを期待する向きにはあまり面白くない映画になっている。良くも悪くもドキュメンタリータッチなのである。
松竹版の方は「失敗からの前進」がテーマの根底にあり、そもそもはやぶさの成功要因のひとつには火星探査機「のぞみ」の失敗があった..という構成になっているのがFOX版との大きな違いであろう。
こちらはFOX版ほどJAXA相模原キャンパスや臼田観測所でのやり取りにはリアルな印象を受けないのだが、小学生向けの宇宙授業のシーンなどで子供を使い、専門的な部分を分かりやすく説明しようとしているくだりは非常に好感が持てた。
また、上記父子のエピソードのほかにも、JAXA研究員(ココリコ田中)の家族の病気などをはやぶさの帰還と同期させながら映画を盛り上げようとしているのだが、ここの物語部分はちょっとツメが甘く中途半端な描写になっており、いまいち感情移入できなかったというのが正直なところ。
しかしながら、総じてFOX版よりもフィクション色が強く、映画はやっぱり人間ドラマでしょ..という人にはこちらをお薦めしたい。
また、この種の映画にはどうしても期待してしまう宇宙空間での特撮描写(CG)は"どっちもどっち"といったところか。相変わらず日本映画の限界を感じる部分ではある。
(松竹版は劇場公開時には3D上映だったらしいが、テレビで鑑賞したので効果のほどはよく分からず。)
ただ、どちらの作品も長旅を終えたはやぶさが、オーストラリアの砂漠上空で微粒子が入ったカプセルだけを手放し自身はバラバラに燃え尽きる美味しいシーンはちゃんと用意されている。ここは必見。
いずれにせよ、宇宙好きの私が当時情報を追いかけていたはやぶさミッションのことを描いてくれているので、観る前から知っていたこと、知らなかったことなど改めて頭の整理もでき、どちらも楽しく鑑賞させてもらった。
最終的な評価としてどちらとも甲乙つけ難いのだが、あえて言うならFOX版の方が好きかなぁ…。
理由は、はやぶさが行方不明になった時などのトラブル時の現場の様子を松竹版よりも臨場感タップリに描けているような気がしたので。
こうなると、もう一つの作品『はやぶさ 遥かなる帰還(2012年 東映)』も観てみないと。
私的評価:
FOX版→★★★★☆
松竹版→★★★☆☆
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