映画鑑賞備忘録

突然ですが、最近は映画館に行ける余裕もあまりなく... 主にTVで観た旧作映画の感想など思うがままに書き綴っています...。

20)インビクタス/負けざる者たち

インビクタス/負けざる者たち (2009年 米)


舞台は、人種隔離政策(アパルトヘイト)の影響が色濃く残る1994年の南アフリカ共和国
 
ネルソン・マンデラが同国初の黒人大統領に就任するところから物語は始まる。
アパルトヘイトは撤廃されたものの、依然として人種的に分断され貧困にあえぐ南アフリカが、1995年に同国で開催されたラグビーのワールドカップを通じて、国全体が盛り上がりを見せ、国民が徐々に一体感を醸成していく過程が描かれる実話である。
 
ラグビーは当時の南アでは白人裕福層のためだけのスポーツであり、ある種アパルトヘイトの象徴でもあった。
マンデラは強力なリーダーシップと"赦し"の精神を持って、そのラグビー代表チームにあえて目をかけ、民族の融和を図ろうと奔走する。
なるほど。新体制となった南アフリカはこうして再生したのか...ということがスポーツ映画という一級のエンターテイメントの力を借りてよく理解できる。
 
1995年のラグビーW杯と言えば、日本人目線だと、ニュージーランドオールブラックスに日本代表が100点差以上という1試合の最多得失点差記録を作られ惨敗した... という負のイメージしかなかったが、(本作の中でも1シーンで言及あり)地元ではこんなドラマが展開されていたのですね。恥ずかしながらこの映画を見て初めて知った次第。
 
弱小チームが不屈の精神を持って強い相手に打ち勝っていく... フィクションならば使い古されたモチーフだが、実話であるが故に妙に説得力があり陳腐さは感じられない。
南アフリカアパルトヘイトを背景としているものの、政治的なメッセージだけの一面的な内容とせずに、うまくラグビーのW杯をからめ、映画的カタルシスを味わうことができる魅力的な脚本として仕立てられていて非常に興味深い作品である。
 
監督は大御所、クリント・イーストウッド。彼の監督作品は古くは『ファイヤーフォックス』あたりから、最近では『アメリカン・スナイパー』まで、結構観てきているが(もちろん未見の作品も多数あり)、イーストウッド映画では私的ベスト1にランクインするくらい、好きだなこの映画。
 
主役のネルソン・マンデラを演じるのは、名優、モーガン・フリーマンマンデラ本人からもお墨付きをもらったというエピソードもあるように、もうこの人しかいないと思わせる程のハマリ役。
マンデラの常に笑顔を絶やさない優しい表情と、信念を持った強い眼差しを巧みに演じ分けていて、その熱演ぶりは次第にマンデラ本人では?と思えてくる程のレベル。
 
最後に、覚え辛く変わったタイトルだと思ったので、見終わった後に調べてみたところ、インビクタスとは、ラテン語で「屈服しない」とか「征服されない」といった意味だそうだ。
物語の中では、投獄されていた時代からマンデラ座右の銘とする言葉が載る詩の題名として登場するのだが、この映画では盛んにその詩の一節が繰り返され、全編に渡り「インビクタス」がキーワードとなっている。
 
それは、南アラグビー代表チームとしてのインビクタスであると同時に、様々な反発や苦境に置かれても決して屈しないマンデラの矜持としてのインビクタスでもある。
 
私的評価:★★★★★ 

 

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