映画鑑賞備忘録

突然ですが、最近は映画館に行ける余裕もあまりなく... 主にTVで観た旧作映画の感想など思うがままに書き綴っています...。

16)ゼロの焦点

ゼロの焦点 (2009年 日本)

 

松本清張原作の映画化作品。とても著名なお話なので、これまで何度も映像化されているみたいだが、劇場用の映画作品としては本作でニ度目だそうだ。(一回目は1961年制作の松竹映画)

 

主演は広末涼子
まだ戦後の影響が色濃く残る昭和30年代初頭の北陸金沢を舞台に、夫の失踪をきっかけに起こるいくつかの殺人事件の真相に迫るミステリーだ。
 
私は今まで原作も読んだことがなく、映像化作品もどれも観たことがなかったので、前提知識ほぼゼロで今回鑑賞した。
前半のうちはなかなかどうして、えっ?誰が犯人??ってな感じで、ハラハラドキドキ感が強くかなり引き込まれた。
 
しかしながら、中盤以降でだいたい犯人の察しがついてくると、一気にミステリー色は薄くなり、やや唐突な展開やストーリーの無理矢理さで中だるみしてくる。
さらにラストに至っては、「えーっ!、どうして○○さん自殺しちゃうの?」という違和感しか残らない衝撃の展開が・・・。
原作はきっとこんなラストじゃないんだろうな... 読んだことないのでホントのところは分からんけど。
 
犯人が殺人に至る経緯が、戦後の傷跡が大きく影響しているというお話なので、悲しいかな、21世紀の現代ではそのリアルさを醸し出すのはかなり難しい作業だったのは想像できる。
が、ちょっと人間関係、とりわけ各登場人物の感情表現の部分を軽視しすぎな脚本に感じた。まぁ2時間という限られた尺の中では致し方ないのかもしれないけど。
 
一方、画面細部の背景描写、昭和30年代の鉄道(当然蒸気機関車です!)、駅や街並み、衣装、小物に至るまでの再現性は見事だ。どうやって撮影したんだろう?と唸らせるレベルにあったと思う。
 

さらに、広末涼子を始めとする主要メンバーの三女優はどなたもそれなりにいい演技をしていたと思う。

特に失踪した広末の夫(西島秀俊)と懇意にしていた社長夫人を演じていた中谷美紀の鬼気迫る怪演は素晴らしかった。
もともと中谷の演技力には一目置いていたけど、この作品も全く期待を裏切らない。個人的に好きな女優さんのひとり。
 
また、薄幸な女性を演じさせたら右に出る者はいないと評判の木村多江
苦労の末の"安住の地"のはずだった男性に裏切られ、信じていた旧友にも貶められ、そして断崖絶壁から・・・というとんでもなく不幸な役柄はまさに彼女の真骨頂である。
 
そして、広末もその丸顔とアニメ声が、結婚してすぐに夫に失踪された新妻役として何となくしっくりこない印象も捨てきれなかったけど、"事件"を通じて強く成長していく女性を健気に、時に力強く演じていた。かなり頑張っていたと思う。
 
ただただ違和感が拭えない後半の展開が残念。
こうなるとやっぱり原作が読みたくなってしまう。原作を読んでからもう一回改めて鑑賞するとまた違った見方ができるかもしれない。
 
それにしても本作のタイトルはなぜ「ゼロの焦点」なのだろう?最後まで見ても意味が分からなかった。
松本清張の作品はタイトルの付け方にひと癖あるというか、私にとっては非常に難解です。
 
私的評価:★★☆☆☆

 

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