10)サイコ
『サイコ』 (1960年 米)
全編通して観たことはないけど、すごく有名なおかげで、予備知識もなんとなく入ってきちゃってるし、観たことある気でいる... そんな映画ってないだろうか?
私にとってはこの『サイコ』がまさしくそんな作品のひとつだった。
ちょっと前に深夜のBSで放映していたので、意を決してHDDレコーダーに録画しておいた。
今さら多くを語るまでもないが、アルフレッド・ヒッチコックの最高傑作にして、文字通りサイコ・スリラー映画の金字塔である。
映画を普段あまり観ないような人でも、あのシャワールームでのジャネット・リーの絶叫、ザクザクと何度も振り下ろされるナイフ、不気味な効果音のごとき音楽...という名シーンを目にしたことある人は少なくないはず。
もちろん私もあの有名なシーンはこれまで何度となく見たことがあるし、実は今回改めて鑑賞する前から犯人についても完全に予測できていた(一度もまともに観たことないのに!) くらいなので、それだけ何度となく話題に登る「歴史的映画」ということだろう。
観ている者のミスリードを誘い、観客には「Aが犯人だろう..」と思わせておいて、最後に「実はBが犯人でした!」という、今となっては少々使い古された手法が、この作品においては遺憾なく発揮されていている。(このような展開のスリラー映画の元祖かも?)
主役であるはずのヒロイン(ジャネット・リー)を物語の中盤であっさりと退場させてしまい、観る者を無理矢理違う方向へいざなうストーリー展開はさすがと言う他ない
最近観たものの中で似たような手法によって観客を引きつける映画に『ソウ(1作目)』があげられる。どちらも終盤までダレることなく張り詰めた緊迫感が続き、最後に「エエ~ッ!!」と驚嘆させられる良作であった。鑑賞後に非常に疲れるタイプの映画ながら、好きです、この手の映画。
もう50年以上前に制作された全編モノクロ映像の作品だが、細かいカット割りをテンポよくつなぎ合わせることで緊張感を煽る演出などその独特のカメラワークにより、今見ていても充分怖い...。というか、あまり細部が見渡せないモノクロが故の怖さがある。
いや~こんな時代に、こんな映画作っちゃったんですね、ヒッチコック。脱帽。
私的評価:★★★★☆